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躁鬱(双極性障害)とは何か|うつ病との違いを精神科医が解説

「最近すごく元気で眠れなくても平気、でも以前はひどく落ち込んでいた」——そんな波に心当たりはないでしょうか。

気分の浮き沈みは誰にでもあるものですが、その波が日常生活や仕事、人間関係を大きく揺るがすほど激しい場合、双極性障害(躁鬱病)の可能性があります。

双極性障害はうつ病と混同されやすく、正しく診断されるまでに時間がかかるケースが少なくありません。

本記事では、南行徳メンタルクリニック院長・川向哲也が、双極性障害の基礎知識からうつ病との見分け方、治療の考え方まで、できるだけ分かりやすくお伝えします。

■ この記事でわかること

  1. 双極性障害(躁鬱病)とはどんな病気か
  2. 双極Ⅰ型・Ⅱ型の違い
  3. 躁状態・うつ状態それぞれの症状
  4. うつ病との違い・なぜ誤診されやすいのか
  5. 原因とリスク要因
  6. 治療の基本的な考え方
  7. 受診のタイミングと注意点

■双極性障害(躁鬱病)とはどんな病気か

双極性障害とは、気分が高揚する「躁状態」と、気持ちが沈む「うつ状態」が繰り返し現れる精神疾患です。

かつては「躁鬱病(そううつびょう)」と呼ばれており、現在もその名称のほうが馴染みがある方も多いでしょう。

「躁」も「うつ」も気分の変動のように聞こえますが、ここでいう躁状態・うつ状態は、日常的な「テンションが高い」「気落ちした」といったレベルをはるかに超えています。

症状が強い時期には、仕事や家事ができなくなったり、重大な判断ミスを犯してしまったりするほど生活への影響が大きいのが特徴です。

国内の有病率は人口の約0.4〜1%とされており、厚生労働省の「こころの病気を知る」でも双極性障害について詳しく解説されています。

決して珍しい病気ではなく、市川市・船橋市・浦安市・江戸川区・南行徳エリアでも、当院には多くの方が相談にいらっしゃいます。

重要なのは、双極性障害は適切な治療で症状をコントロールできる病気だということ。

早期に正しい診断を受けることが、回復への大きな一歩になります。

■双極Ⅰ型・Ⅱ型の違い

双極性障害には大きく分けてⅠ型とⅡ型があります。違いは「躁状態の強さ」です。

【双極Ⅰ型】

躁状態の程度:「躁エピソード」あり(入院が必要になることも)
気づきやすさ:本人・周囲ともに気づきやすい
誤診リスク:比較的少ない

【双極Ⅱ型】

躁状態の程度:「軽躁エピソード」のみ(日常生活は一応送れる)
気づきやすさ:軽躁のため気づかれにくい
誤診リスク:うつ病と誤診されやすい

Ⅱ型は躁状態が軽いため、「調子の良い時期」として本人が気づかないまま過ごしていることがあります。受診のきっかけがうつ状態のときになるため、「うつ病です」と診断されてしまうケースが非常に多いのです。

また、Ⅰ型・Ⅱ型のどちらにも当てはまらない形で現れることもあり、「気分循環性障害」(より軽い波が長期間続くもの)という診断がつく場合もあります。

■ 躁状態・うつ状態それぞれの症状

躁状態のおもな症状

躁状態のとき、本人は「絶好調」と感じていることが多く、問題だと自覚しにくいのが特徴です。 だからこそ治療を拒否されるケースもあり、ご家族から相談いただくことも多いです。 

 周囲の人が「様子がおかしい」と先に気づくケースも少なくないのです。

だからこそ治療を拒否されるケースもあり、ご家族から相談いただくことも多いです。

・睡眠が短くても疲れない(3〜4時間の睡眠で十分に感じる)
・気分が異常に高揚している(根拠なく自信満々、万能感がある)
・考えが次々と浮かんで止まらない(思考が飛躍する、話が脱線しやすい)
・活動量が急に増える(仕事を大量に抱え込む、夜中まで作業を続けるなど)
・衝動的な行動が増える(大きな買い物、無計画な投資、性的逸脱行動など)
・怒りっぽくなる(思い通りにならないと激しく感情的になる)

「躁状態のとき、患者さんご自身は『人生で最高の状態』と感じていることがあります。だからこそ治療を拒否されるケースもあり、ご家族から相談いただくことが多いです。」

うつ状態のおもな症状

双極性障害のうつ状態は、通常のうつ病に似た症状が現れますが、いくつかの特徴的な違いがあります(後述)。

・強い憂うつ感・無気力(何もしたくない、ベッドから起き上がれない)
・興味・喜びの消失(以前楽しんでいたことが楽しめない)
・睡眠の変化(眠れない、または過眠になる)
・食欲の変化(食欲がない、または過食)
・集中力・判断力の低下(仕事や家事のミスが増える)
・死にたい気持ち・自己否定感(「消えてしまいたい」などの考えが浮かぶ)

うつ状態が続いているとき、多くの方が「これが自分の本来の状態では?」と感じています。

しかし過去に「なぜか異常に元気だった時期」がなかったかどうかを振り返ることが、診断の大きなヒントになります。

■うつ病との違い・なぜ誤診されやすいのか

双極性障害で最も問題になるのが、「うつ病」として長年治療されてしまうケースです。

日本では双極性障害と診断されるまでに平均で数年かかるという報告もあります。

なぜ誤診されるのか

最大の理由は、患者さん自身が「躁状態だった時期」を問題として捉えていないからです。

・受診するのはうつ状態のときが多い(躁状態のときは「元気」なので受診しない)
・軽躁状態は「仕事がはかどる良い時期」と本人が認識している
・問診で「以前元気だった時期」について詳しく聞かれないと情報が出てこない
・Ⅱ型の軽躁は客観的に見ても「普通より少し元気」程度に見える場合がある

誤診された場合に起こりうる問題

うつ病と誤診された場合、抗うつ薬が単独で処方されることがあります。しかし双極性障害に抗うつ薬だけを使用すると、躁転(躁状態に切り替わること)を引き起こしてしまうリスクがあることが知られています。

躁転が起きると、衝動的な行動によって仕事・人間関係・経済状況に取り返しのつかないダメージが生じることがあります。

これが双極性障害の早期・正確な診断が重要な最大の理由です。

【うつ病と双極性障害の主な違い】

       うつ病      双極性障害
気分の波   うつのみ     躁とうつの両方
エピソード数 比較的少ない   繰り返しやすい
睡眠の特徴  不眠が多い    過眠のうつも多い
抗うつ薬   有効       単独使用は危険なことも
主な薬物治療 抗うつ薬     気分安定薬・非定型抗精神病薬

■ 原因とリスク要因

双極性障害の原因は、まだ完全には解明されていませんが、現在の研究では遺伝的要因と環境的要因の複合的な影響によって発症すると考えられています。

遺伝的要因

双極性障害は遺伝との関連が比較的強く、一親等の家族(親・兄弟)に双極性障害の方がいると発症リスクが高まるとされています。

ただし、遺伝があれば必ず発症するというわけではありません。

環境・生活リズムの乱れ

睡眠リズムの乱れが躁状態やうつ状態の引き金になることが分かっています。たとえば、夜勤が続く職場環境や、繁忙期のストレスによる徹夜が引き金になるケースがあります。市川市・船橋市・浦安市・江戸川区のような都市部で通勤・交替勤務が多い環境では、こうした生活リズムの乱れに注意が必要です。

・睡眠不足・夜型生活
・強いストレスイベント(職場の異動、離婚、大きな喪失体験など)
・アルコール・薬物の影響(躁状態・うつ状態を悪化させることがある)

■ 治療の基本的な考え方

双極性障害の治療は、「今の症状を抑える急性期治療」と「再発を防ぐ維持療法」の二段階で考えます。

生涯にわたる病気と向き合っていくという観点から、長期的な視点でのコントロールが大切です。

薬物療法

治療の中心は薬物療法です。主に使われるのは以下のとおりです。

・気分安定薬(炭酸リチウム・バルプロ酸ナトリウム・ラモトリギンなど)
 → 躁とうつ両方の波を安定させる基本薬

・非定型抗精神病薬(クエチアピン・オランザピンなど)
 → 特に躁状態や混合状態の急性期に使用

・抗うつ薬
 → 双極性障害では単独使用を避けることが多く、使用する場合は慎重に判断します

生活リズムの整備

薬と同じくらい大切なのが、睡眠・食事・活動の規則正しいリズムを保つことです。睡眠が乱れると躁状態が誘発されやすいため、睡眠の安定は治療の要となります。

・毎日ほぼ同じ時間に起きる・寝る
・夜のスマートフォン・PC使用を減らす
・飲酒を控える(アルコールは睡眠の質を下げ、躁・うつ双方を悪化させる)

心理教育・精神療法

双極性障害についての正しい知識を持つこと(心理教育)は、病気との長いつきあいの中で非常に重要です。「自分の波のパターンを知る」「前兆に気づいて早めに対処する」といったスキルを身につけることが、再発防止に大きく貢献します。

【医師の一言】
「薬を飲んで症状が落ち着いても、勝手に薬を止めてしまう方が少なくありません。

再燃・再発を繰り返すほど病状が複雑になることがありますので、医師と相談しながら少しずつ調整していくことが大切です。」

■ 受診のタイミングと注意点

「自分は双極性障害かもしれない」と感じたとき、どのタイミングで受診すべきか迷う方も多いと思います。

以下のような状態が続いているなら、早めにご相談いただくことをお勧めします。

・うつ状態が2週間以上続いていて、日常生活に支障が出ている
・過去に「異常に元気な時期」が繰り返しあった
・うつ病として治療を受けているが、なかなか改善しない
・抗うつ薬を飲み始めてから気分が高揚しすぎた経験がある
・家族や友人から「最近様子がおかしい」と言われた

受診の際は、現在の症状だけでなく、過去の「元気すぎた時期」についても医師に話すことが正確な診断につながります。メモや日記に残しておくとより伝わりやすいです。

南行徳メンタルクリニックは、南行徳駅から徒歩圏内に位置しており、市川市・浦安市・船橋市・江戸川区からもアクセスしやすいクリニックです。

初めての精神科受診に不安を感じる方も多いかと思いますが、まずはお気軽にご相談ください。

「怠けているだけでは?」「もう少し様子を見れば治る?」と自己判断で受診を遅らせてしまう方も少なくありません。

しかし双極性障害は、放置することで波が激しくなったり、回復に時間がかかるようになることがあります。早めのアクションが、回復への近道です。

■ まとめ

・双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す気分の病気
・Ⅱ型は軽躁のためうつ病と誤診されやすい
・抗うつ薬の単独使用は躁転リスクがあり、正しい診断が重要
・気分安定薬による薬物療法と、生活リズムの整備が治療の柱
・「異常に元気だった時期」を医師に伝えることが診断の鍵

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予約はお電話またはWEBで承っておりますので、こちらからお願いします。

初診専用番号:080-9982-7252

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■ 著者

南行徳メンタルクリニック院長 川向 哲也

経歴


・神奈川県立相模原高校卒業
・慶應義塾大学理工学部
・島根大学医学部卒業
・島根大学精神医学講座(助教 医局長)
・石東病院(島根県大田市)(診療部長)
・相模ヶ丘病院(神奈川県相模原市)(副院長)
・秋元病院(千葉県鎌ヶ谷市)(院長)
・2021年4月 南行徳メンタルクリニック開設
・千葉県精神保健福祉センター非常勤医師(措置診察担当)

資格・所属学会


・精神保健指定医
・日本精神神経学会
・日本医師会認定産業医
・臨床研修指導医

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本記事は、医療機関の経営支援・Web戦略支援を専門とする株式会社C&D Hubの取材・編集協力のもと作成しています。

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